執筆者紹介
証券アナリスト・中島 翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。
その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。
その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。
さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。
仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト
9月の仮想通貨市場の流れを解説
9月のビットコイン市場トレンド
まずは9月の仮想通貨市場の全体の流れを、ビットコイン相場をベースにおさらいしてみよう。
ビットコイン市場では8月中旬にハッシュリボンが点灯し、大きな節目と考えられていた50,000ドルを8月23日に突破、ショートカバーを巻き込む動きを見せ50,000ドル台半ばまで続伸した。
その後、9月に入り4日には、一時50,000万ドルを突破、1週目は上昇トレンドが継続、9月7日には直近最高値である52,945ドル付近まで上昇、当日は42,830ドルまで1日のうちで1万ドル程度の下落をし、46,000ドル台後半で引けた。
その後レンジに入りながらも9月20日には再び大きな下落を見せ二日連続の陰線で39,600ドルまで下降し、40,500ドル付近をサポートとして推移しながら9月30日・10月1日と48,500ドルまでの回復を見せるものの、その付近に位置するレジスタンスに跳ね返されている。
次にそれぞれ相場転換の起点となっている日に何が起こったのかをファンダメンタルズを中心に解説したい。
相場転換のファンダメンタルズ
まず、直近最高値を記録した9月7日であるが、その日はそれまでのレジスタンスとして強く作用していた52000ドル付近での売り圧力をエルサルバドルが国としてビットコインを購入し、今後も購入を継続するというニュースをきっかけに突破したことが要因である。
この際はエルサルバドルは200BTCを購入をしたとの報道がなされた。
当日のニューヨーク時間には、突如先物市場のロングポジションの清算が11億ドル分発生した結果、先物主導で急落したが42,000ドル付近まで下落した際にはエルサルバドルが押し目買いを行った様子で価格は47,000ドルまで持ち直し、その後は押し目買いのフローが40,000ドル前半で入っていた様子だ。
9月20日には中国恒大集団のデフォルトリスクが現実味を帯びてきたことにより世界の株式市場が反応し大幅下落、各国の金利も低下しリスクオフの動きが出た。
さらに9月24日には中国政府による仮想通貨の新たな規制が発表され一時的にビットコインも急落した。
今回の動きに関連して、重要なポイントとしては「株の動きに連れ安とならなかったこと」であり、これまで米国株が崩れる場面ではビットコインから仮想通貨市場全体に波及していたが、昨日は米国株が急落する中でもビットコインは底堅く推移していることが印象的であった。
その後は40,000ドル前半のサポートに支えられながら推移をしたが、9月30日にはアメリカのSECゲンスラー委員長によりビットコインETFに関して肯定的とも捉えられる発言があった結果、価格は大きく戻す形となり、パウエル議長も仮想通貨を禁止するつもりはないという趣旨の発言を行ったことが、ビットコインの価格を後押しする格好となった。
9月のイーサリアム市場トレンド
次にイーサリアムの9月の動きを振り返ってみたい。
イーサリアムに関しては、8月に大型アップデート「ロンドン」が成功し、堅調な推移を見せたまま9月に突入。
9月4日は一時4,000ドルを突破するものの、4,000ドル前半のレジスタンスを突破できず、9月7日にはビットコインに連れ安となる形で大幅に下落、9月16日には3,600ドル後半まで回復するものの、9月20日にはビットコインと同じく中国恒大集団のデフォルト懸念に端を発した世界的なリスクオフと中国政府による仮想通貨規制によって、一時2,600ドル台半ばまで下落をするものの9月30日からはビットコインと同様の理由で回復基調となっている。
中国政府による仮想通貨規制と中国恒大集団のデフォルト懸念
ここで、9月後半の下落の発端となった中国恒大集団のデフォルト懸念と中国政府による仮想通貨規制について補足で解説しておきたい。
まず、中国恒大集団であるが、中国恒大集団は同国第二位の不動産デベロッパーで、金融など数多くの事業を手がけグループ化している。
その負債総額は33兆円と我が国の一般会計予算の三分の一にも上る。
これだけの企業が破綻するとなれば大きな影響が出そうだが、自由経済国であれば不動産価格はかなりの勢いで大幅な下落を見せる局面だが、中国政府はそれを見越して、不動産の価格を下げた販売を禁止することで不動産価格の下落を防いでいる。
この措置により不動産価格がいつまで維持されるのかは未知数であるが、いずれにしても警戒を続けるべきテーマである。
個人的には中国恒大集団単体の負債である33兆円はリーマンショック時の総額と比較しても緩いためそこまでの影響はないと思われるが、懸念しているのは中国恒大集団を起点としたサプライチェーンへの波及である。
33兆円は巨額なものの、危機を起こすことはないと思う一方でどの程度見えていない危ない企業に波及するのかという点は気にしておいた方がいいだろう。
また、9月下旬には中国政府より同国の仮想通貨取引に関して、いっそう厳しい規制が行われた。
中国政府の仮想通貨規制は、2018年から段階的に進められており、今年の5月には電力供給懸念と相まってマイニングに対する規制金融機関に仮想通貨の関連業務を禁じる通達がなされている。
これまでは個人ユーザーにとっての影響は顕著には出ていなかったが、今回の規制は仮想通貨取引や取引情報の提供に関連するサービスが全面的に禁止されることとなった。
今回の規制措置は刑事責任が追及される厳しいものだ。
既に中国国内の仮想通貨取引所は閉鎖ししているが、個人ユーザのほとんどはBinanceやOkcoinなどの国外取引所の利用が可能であった。
しかし、今回の措置で中国の居住者が国外の仮想通貨取引所がインターネットを通じた取引業務を提供することを禁じるもので、国外にある巨額の仮想通貨の動向が注視されている。
また中国本社のhuobiも中国本土でのサービス提供を停止しておりHTトークンが大きく下落する動きも出ていた。
やはり地合いとしては堅調な地合いと言えるだろうが規制で一時的に下振れするリスクは常になることは考えておきたい。
しかしながら長期的な上方向の圧力というのはしっかりとしてきている印象なので、そこはチャンスと捉えて行くほうが無難だろう。
市場の動向をBTCUSDチャートでチェック
最後にBTCUSDのチャートをチェックしたい。
8月下旬頃から機能していたフィボナッチ・リトレースメント50.0%のラインと200日線のサポートに支えられ、9月7日には直近最高値である52,945ドル付近まで上昇、一気に200日線をブレイクするものの、フィボナッチ38.2%あたりは反発、50.0%ラインが一旦レンジとして機能するものも、ブレイク後はサポートとして機能、 中国恒大集団の影響で40,000ドル台をサポートするゾーンへと推移しているが、6月~8月よりは一段高いレンジに移行したように見える。
しばらくは40,000ドル付近が強いサポート、50,000ドルと53,000ドルが節目のレジスタンスとして機能しそうな様子。
9月はアノマリー的にもビットコインは下落しやすい月となっている一方で10月以降は株式市場含めて11月の外資系の中間決算がある中旬あたりまでは上昇しやすい地合いになることから、ビットコインも50,000ドル方向で推移すると考えている。
そのため個人的にはビットコインは40,000ドルを割れるような動きが出るまではロング継続で淡々と年末までポジションは積んでいく予定としている。
続いてイーサリアム(ETH/USD)のチャートをチェックしたい。
8月に大型アップデートロンドンを無事に成功してアップトレンドのまま高値付近でフィボナッチリトレースメント50%戻しラインに支えられながら高値付近でレンジを形成していたイーサリアムだが、9月3日には直近最高値の4,030ドルを記録し、その後は4,000ドルのレジスタンスを越えられずに9月7日に3,009ドルまで下落、その後も一段低い下落お店21 SEP には2,600ドル台半ばまで下落し、2,700ドルをサポートとしながら9月下旬のパウエル氏の発言などにより上昇基調へと復帰している。
直近一か月のボリンジンジャーバンドの動きとしては、上に2.8σ下に2.7σの範囲での動きとなっており、3σ付近でレジスタンスとしては機能していると見て良いだろう。
また、7月20日の安値と9月21日の安値を結んだトレンドラインで2度ほど跳ね返されており 、このトレンドラインはサポートとしてしばらく有効に機能する可能性が高い。
今後の動きとしては、サポートにフィボナッチリトレースメント38.2%戻しである2,700ドル前半、レジスタンスに直近、最高値である4,000ドル前半を基準とするゾーンで前述のトレンドラインとフィボナッチリトレースメント50.0%戻しの3,000ドル前半の サポートラインに特に注視してトレードを行っていくと良いだろう。