執筆者紹介
証券アナリスト・中島 翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。
その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。
その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。
さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。
仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト
6月の仮想通貨市場の流れを解説
6月の仮想通貨市場トレンド
6月の仮想通貨市場はエルサルバドルのビットコインを法定通貨採用する話題が仮想通貨市場では一番のホットトピックとなった。
ビットコインは5月中国の規制の厳格化の流れやチャートのテクニカルが完全に壊れてしまったことから、レンジ内での推移に。
6月初旬は30,000ドル台後半で推移し、6月中旬には一時41,000ドルに乗せる場面も見られたが、そのから反転下落し、29,000ドルを割れる水準まで到達。
しかし短期的なロングポジションが清算されたことによって売り圧力は減退し、中長期的なプレイヤーや大口投資家が押し目と見て買ってくる動きも見られ始め、30,000ドル台半ばまで反発する動きに。
チャートも30,000ドルが大きな節目のポイントとなってきている。
一方でイーサリアムは6月弱い動きが継続。
6月最初は2,600ドル付近でスタートし、2,800ドルに乗せる場面も見られたが、そこから月末まで下落トレンドが継続し、一時1,700ドル付近まで大幅下落する場面も見られた。
自律反発も2,300ドルまでとなっており、上値の重い展開が継続している。
トレンド形成の背景
6月は中国での仮想通貨企業対しての規制の厳格化やマイニングを禁止する等仮想通貨企業に逆風とも言えるような規制を打ち出してきたことで、中国での仮想通貨の温度感は冷めてきており、世界的にはBinanceへの風当たりが強くなってきたりと、規制面で世界が厳格化してくる動きが顕著に見られた月となった。
この動きがビットコイン含めて仮想通貨市場全体を重くしたということが6月のテーマとなりそうだが、それ以上に話題となったニュースが「エル・サルバドルがビットコインを法定通貨に採用」というニュースであり、このニュースを受けて、自国通貨に信任があまりない新興国もエル・サルバドルに続かんとする動きで出始めている。
先進国やIMF等はこの動きに懸念を持っている様子であり、まだ世界が「法定通貨のビットコイン」という認識が広まるには時間がかかりそうだが、ここで注意すべき点は法定通貨の場合準備資産としてビットコインをある程度国が保有する可能性があるということであり、そのようになった場合はビットコインの大きな上昇圧力がかかるということがポイントとなるだろう。
足元ではアルゼンチンであったり、ナイジェリアというある程度の大きな新興国がビットコインを検討した事実があるため、このビットコインを法定通貨にする動きは長期的な価格形成に大きな影響を及ぼすため注視すべき話題となる。
イーサリアム、大型アップグレードへの期待値
イーサリアムに関しては8月に予定されている大型アップグレード「ロンドン」だろう。
現在イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムはPoW(Proof of Work)となっているが、これからPoWへ移行する予定となっており、今回のアップデートで大きな変化とも言える点だ。
また大型アップデート「ロンドン」では5つのネットワーク改善提案(EIP)が実装される予定で、EIP-1559の変更は、現在イーサリアムを利用するユーザーでも問題視されている、ネットワークの渋滞や取引コストの急騰という点を改善するために変更されるものだ。
現在イーサリアムはオークション方式となっているが、今回の変更によって手数料は2つの方式にアルゴリズムで変更される予定となっている。
一つはプロトコルレベルで設定されるもので、基本手数料であり、優先的なトランザクション承認のためにマイナーへ支払う優先手数料の2つが設定される予定。
またこの2つの手数料のうち基本手数料に関してはバーンと呼ばれる焼却が行われていく予定となっている。
バーンとは仮想通貨で発行されているもの自体を無くすことであり市場流通量全体を減少させることで価格の維持、安定化を図るものとなっている。
供給量が減少することになるため、需給バランスがタイトになることから価格は上昇しやすいと考えることができる。
株式のマーケットでは自社株買いに近いものと理解していいだろう。
今回の変更は現在ではわかりにくかった手数料の予測が簡単になると考えられていることから今後のイーサリアムのユーザーがこのロンドンのアップデートによって増加すると予想されている。
今回の大型アップデートは6月24日にテストネット「Ropsten」が実施されており、7月1日には次のステップで「Goerli」のテストネットがスタートしており、Rinkebyテストネットも開始している。
トロンでUSDCの取引を開始
6月はトロンブロックチェーン上でUSDC(米ドル連動型ステーブルコイン)が取引スタートし、開始1ヶ月で1億ドルを突破しているということが大きな話題となっている。
USDTのステーブルコインが市場ではメジャーなステーブルコインとなっているが、ステーブルコインのフローの動きというのはビットコインの価格にも影響するため、USDTとUSDC両者ともに仮想通貨取引所への流出入の動きをチェックしておくといいだろう。
市場の動向をチャートでチェック
BTCUSDのチャート
BTCUSDのチャートをチェックすると短期的なレジスタンスラインというのが6月中旬につけた41,000ドル付近が節目として考えられ、下のサポートは30,000ドルちょうど当たりが重要な節目となっている。
特に現在下落トレンドの途中と考えている投資家も多く、短期的なポジションの傾きはショートポジションが優勢となっており、中長期的な投資家は6月底固めをする中で、淡々とビットコインの保有量を増加させてきている状況。
そのためショートカバーを巻き込んだ急騰は期待したいようなチャートの動きになりつつある。
ETHUSDのチャート
2つ目のチャートのETHUSDのチャートでは綺麗に200日単純移動平均線に支えられながら下値を切り上げてきており、底堅いチャートになりつつある状況。
サポートラインが1,700ドル付近が機能しやすい形となっており、短期的な下の目処は200日移動平均線、移動平均線を下抜けした場合は1,700ドルがターゲットとなるか。
紹介したイーサリアムの大型アップグレードがあることや、現在ビットコインよりもイーサリアムのアクティブアドレスが多くなってきている状況であり、イーサリアムがビットコインよりも個人投資家には好まれている様子。
一旦の調整は完了したと考えられ、ビットコインの保有者も一部イーサリアムへポートフォリオをリバランスする動きが6月は見られていた。
7月から8月にかけては株式市場も含めたマーケット全体が閑散期に入りやすくリスクアセットは上昇しにくい地合いが続きやすくなり、現在米国の金融緩和が縮小観測(テーパリング)が出始めている中、インフレ懸念も出てきており、金利上昇を受けた株安等投資家が現金化に走りやすい相場になる可能性もある。
その動き中で、リスクアセット全体が売られてしまった場合は仮想通貨市場も影響を受けやすく世界全体の資金フローの動向もビットコインを含めた仮想通貨市場全体に波及するということは注意したいところ。
一方で8月あたりで株価は年間での安値をつけやすい月となっており、年末にかけてはリスクアセットは上昇しやすいため、仮想通貨のポートフォリオを増加させるには仕込むタイミングになることもあることから焦らず買い場を探す展開となるか。