7月号|仮想通貨マンスリーレポート

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執筆者紹介

プロフィール

証券アナリスト・中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。

その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。

その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。

さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。

仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。

【保有資格】証券アナリスト

7月の仮想通貨市場の流れを解説

7月のビットコイン市場トレンド

7月の仮想通貨市場は6月からのレンジ相場を引継ぎ下旬まで推移した。

ビットコインは、7月初旬に1週間の取引量が合計15万8000万ドルと2020年10月以来の低水準を記録。

特に日中の動きの特徴として欧州で売られ、アメリカで買われる形となっていた。

背景には、欧州の規制当局が仮想通貨取引全般に対する監視を強化しているという事情があり、それが欧州からの資金流出を招いたとされている。

また、Binanceに対する欧州大手銀行などの風当たりの強さも資金流出の追い風となったた様子。

ビットコインの取引量が大幅に減少していた7月初旬は32,000ドルから36,000ドル台後半の狭いレンジでの推移となり、その後も7月中旬までレンジ相場が続き、7月19日には一時30,000ドルを割り込む場面も見られたが、6月の最安値である28,600ドルには至らず29,296ドルで踏みとどまった

欧州での売りが一段落し売り圧力が減退し、節目の30,000ドルを割った翌日の7月21日には意欲的な買いが見られ、月末である7月31日まで続くアップトレンドに突入、価格は29,500ドルから31日には一時42,000ドル台半ば約10日間で13,000ドル近くの急騰を見せた。

42,000ドル台半ばからは調整や利益確定売りが入り、37,000ドル台半ばまで押される形となったが、再び上昇トレンドに回帰している。

7月21日からの上昇の背景には、欧州での動きが一段落した事や30,000ドルというサポート目途を下回った水準であった事に加え、イーロン・マスク氏のコメントも上昇を後押しした格好となった。

具体的には、イーロン・マスク氏が「Crypto Council for Innovation(クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション)」が主催したオンラインのパネルディスカッション「The ₿ world」に登壇し、「仮想通貨のマイニングに使用される電力の50%が再生可能エネルギーになった時点でビットコインによる支払いの受付を再開する可能性が高い」と述べ、イーロン・マスク氏個人やテスラのビットコイン保有に加えて、同氏の航空宇宙企業であSpaceX(スペースX)もビットコインを保有している事実や個人的にイーサリアムとドージコインも保有していると述べた。

このコメントを受けて、ビットコインだけではなく、イーサリアムとドージコインも上昇を見せている。

7月のイーサリアム市場トレンド

次にイーサリアムの7月を振り返ってみたい。

イーサリアムに関しては、7月1日に2,276ドルでスタートし、7月7日に2,411ドルまで上昇、その後は緩やかなダウントレンドに入り、7月13日には2,000ドル割り込み、7月19日には1,718ドルの月間最安値を記録したものの、7月21日からはビットコインと同様のアップトレンドに入り、底堅く推移、8月に入ってからも上昇トレンドが継続している。

また、8月初旬に大型アップグレード「ロンドン」が実行され、成功を収めた

これによりイーサリアムのコンセンサスアルゴリズムがPoW(Proof of work)からPoS(Proof of stake)へと移行された。

このタスクはイーサリアムの今後を左右する重大な変化で、スケーラビリティ問題の解決と消費電力の大幅な削減が期待されている。

他にもネットワークの渋滞や取引コストを急騰を改善するためのアップデートが施された。

現在、イーサリアムは、「イーサリアム2.0」と呼ばれる長期に渡るアップデートを進行中で、次の大型アップデートは年末に予定されている「上海」だ。

「上海」がイーサリアム2.0の総仕上げとなるアップデートで、このアップデートが成功するか、また、予定通りのスケジュールで行われるかという点に市場の関心は集まる。

7月のトレンド形成の背景

7月は欧州において、BAINANCEに対する大手銀行からの送金停止やユーロの取扱いの停止など、欧州においては仮想通貨のリスクが高まる結果となった。

一方でアメリカにおいては、仮想通貨レンディング大手であるBlockFiに対して、証券法違反の指摘が相次ぎ、下旬にはテキサス州の証券委員会やアラバマ州も問題視しているとのニュースが出たものの、市場には大きな影響を及ぼすには至らなかったようだ。

しかし、ここ数か月は中国も含めた各国において取引所への規制強化の報道も多く、今後規制の強まりがどこまで価格に影響するのかも重要なポイントの一つとなりそうだ。 

市場の動向をチャートでチェック

最後にBTCUSDのチャートをチェックしたい。

7月21日を起点とするアップトレンドは、42,000ドル半ばを頂点に利益確定の売りと調整が入った模様だが、その後、8月6日にはその水準を超え8月上旬には46,0000台後半まで上昇している。 

レジスタンスとして機能した200日線を突破し、現在では200日線がサポートとして機能するかどうかがマーケットの注目点となっている。

ビットコインの史上最高値である4月14日の64,895.22ドルから6月22日の最安値である28,600.00ドルまでフィボナッチリ・トレースメントを描くと、ちょうど50%戻しが現在値と同水準の46629.31ドル付近であるため、200日線とフィボナッチ・リトレースメント50%ラインを突破できるかという分水嶺に位置している。

イーサリアム_チャート

2つ目のイーサリアムのチャートは、ボリンジャーバンド2σと綺麗にバンドウォークしながらアップトレンドが継続している。

フィボナッチリトレースメント50%戻しである3,043ドル付近も突破しているため、調整はありつつもこのトレンドはしばらく継続しそうではある。

また、8月初旬に成功した大型アップデート「ロンドン」もこの上昇を後押している地合いとみている。

次のレジスタンスとして機能しそうな位置は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%付近の3,350ドル台付近だろう

このラインを超えてくるか、また心理的な節目である4,000ドルを突破するかという点にに注目したい。

8月は「夏枯れ」という言葉もあるようにマーケット全体が閑散期に入りやすくリスクアセットは上昇しにくい地合いが続きやすいというアノマリーがあるが、7月の雇用統計の強い結果を受けて、アメリカ株は高値を更新している

市場の関心はもっぱらテーパリングがいつから行われるのかという点にあるが、FRBの主要メンバーが7月時点で、 今後、2回の雇用統計(8月と9月に発表されるもの)の数字が強ければ秋からでもテーパリングを開始する可能性があると語っており、9月に発表される雇用統計の数字次第では正式なアナウンスがされる可能性も高い

また、8月下旬にジャクソンホール会議が予定されており、 そうタイミングで何かしらのアナウンスがされる可能性もある。

実際にテーパリングが開始され、財政緩和が縮小する局面では、投資家が株の現金化などに走りやすい傾向となり、株式相場は下落傾向となる可能性や、リスクアセットと全体が売られる傾向となる可能性も高いため注意が必要だ。

一方で、コロナウイルスの新種とされるデルタ株の流行がアメリカでも発生しており、感染者が増えている状況である。

現在のところ大きな経済対策に関しては議論されていない模様だが、デルタ株が起因となって緩和の継続の可能性がないわけでもない。

その意味においては、下旬に予定されているジャクソンホール会議の結果と不透明な相場環境になる可能性もあることを踏まえつつ相場に挑む必要がある状況だと言える。

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